自転車も「危険運転」は許されない! 知っておきたい法改正と厳罰化、そして既存の交通ルール

私たちの身近な移動手段である自転車。環境に優しく健康増進にも繋がる一方で、残念ながら自転車が関わる交通事故は依然として多く発生しています。こうした状況を受け、道路交通法が改正され、自転車の運転に対するルールや罰則が強化されています。
特に、令和6年11月1日からは新たな罰則が加わり、より安全な自転車利用が求められるようになりました。この記事では、改正された道路交通法による新しい罰則と、これまでも対象となっていた既存の交通違反について詳しく解説します。
なぜ今、自転車の交通ルールが厳しくなっているのか?
近年、自転車の普及が進むとともに、自転車対歩行者、自転車対自転車、自転車対自動車など、様々な形態での事故が増加傾向にあります。特に、自転車側の安全不確認や信号無視、無理な横断などが原因となる事故が問題視されています。
こうした背景から、自転車も車両の一種であることを再認識し、運転者一人ひとりが交通ルールを遵守し、安全運転を徹底することの重要性が高まっています。法改正は、自転車の危険な運転行為を抑止し、交通事故を減らすことを目的としています。
令和6年11月1日施行!自転車の新しい罰則
私たちの日常生活に溶け込んでいる自転車ですが、その運転には道路交通法に基づいた責任が伴います。近年増加傾向にある自転車関連事故の抑止を目指し、令和6年11月1日より道路交通法の一部が改正され、自転車の運転者に対してより厳格なルールと新しい罰則が適用されることとなりました。
「ながらスマホ」運転への罰則強化
自転車運転中に、スマートフォンなどを手に持って通話したり、画面を注視したりするいわゆる「ながらスマホ」は、以前から危険行為とされていましたが、今回の改正で罰則が強化されました。
- 罰則: 6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金
- 「ながらスマホ」により交通の危険を生じさせた場合は、さらに罰則が重くなり1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。 走行中のスマートフォンの操作は、視線が手元に集中し、周囲の状況把握が遅れるため大変危険です。交通事故に直結する行為として、厳しく取り締まられることになります。
「酒気帯び運転」の新設と罰則
これまでは「酒酔い運転」(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態)のみが罰則の対象でしたが、今回の改正で「酒気帯び運転」(身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態)も新たに罰則の対象となりました。
- 罰則: 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 また、自転車を運転する可能性があると知りながら、運転者に酒類を提供したり、酒気を帯びていることを知りながら同乗を依頼したりした場合も罰則の対象となります。
- 自転車の提供者: 3年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 酒類の提供者・同乗者: 2年以下の懲役または30万円以下の罰金 飲酒運転は、自動車と同様に自転車でも大変危険な行為です。判断能力や平衡感覚が鈍り、重大な事故に繋がる可能性が高まります。「これくらいなら大丈夫だろう」という軽い気持ちでの飲酒運転は絶対にやめましょう。
悪質な違反には「自転車運転者講習」が義務付け
改正道路交通法では、上記の新しい罰則対象行為に加え、既存の危険行為を含め、特定の危険行為を3年以内に2回以上繰り返した場合、「自転車運転者講習」の受講が義務付けられます。
講習受講の命令に従わない場合は、5万円以下の罰金が科されます。この講習制度は、危険な運転を繰り返す運転者に対し、交通ルールの再確認や安全意識の向上を促すためのものです。
改正前から存在する自転車の主な交通違反
法改正による新しい罰則に加えて、これまでも自転車の運転者には様々な交通ルールが課されており、違反した場合には罰則や指導・警告の対象となります。主な違反行為は以下の通りです。
- 信号無視: 信号機の色に従わないで交差点に進入する行為。歩行者用信号の場合も対象です。
- 指定場所一時不停止等: 「止まれ」の標識がある場所などで一時停止をしない行為。
- 通行区分違反: 車道を通行すべき場所で歩道を通行したり、車道の右側を通行したりする行為。原則として自転車は車道の左側を通行する必要があります。
- 歩道における通行方法違反: 歩道を通行する場合に、歩行者の通行を妨害したり、十分な徐行をしなかったりする行為。自転車が通行可能な歩道でも、歩行者優先です。
- 夜間の無灯火: 夜間、前照灯(ライト)を点灯せずに運転する行為。他の車両や歩行者からの視認性が著しく低下し危険です。
- 制動装置(ブレーキ)不良自転車運転: ブレーキが効かない、または十分に機能しない自転車を運転する行為。
- 酒酔い運転: アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で運転する行為。
- 妨害運転: 他の車両や歩行者の通行を妨害する目的で、蛇行運転や急な幅寄せなどを行う行為。
- 安全運転義務違反: ハンドルやブレーキなどを確実に操作せず、また他人に危害を及ぼすような速度や方法で運転する行為。傘差し運転や、イヤホン・ヘッドホンを使用して安全な運転に必要な音や声が聞こえない状態での運転などもこれに該当します。
- 定員外乗車: 規定の人数を超えて二人乗りをする行為。(幼児用座席に幼児を乗せるなどの例外はあります)
- 並進可の標識がない場所での並進: 「並進可」の標識がない場所で、自転車が横に並んで走行する行為。
今回の法改正で特に注目すべきは、二つの危険な運転行為に対する罰則の整備です。一つ目は、多くの方が日常的に行いがちな「ながらスマホ」運転への罰則強化です。自転車を運転しながらスマートフォンなどを手に持って通話したり、その画面を注視したりする行為は、周囲への注意力が散漫になり、事故を引き起こす非常に高いリスクを伴います。このため、改正法では、このような「ながらスマホ」運転を行った場合、六月以下の懲役または十万円以下の罰金が科されることになりました。さらに、もし「ながらスマホ」運転によって交通事故を起こすなど、交通に危険を生じさせた場合には、罰則はさらに重くなり、一年以下の懲役または三十万円以下の罰金が科される可能性があります。安全運転の基本である「前をしっかり見て、周囲の状況に注意を払う」ということが、改めて法律によって強く求められていると言えるでしょう。
もう一つ、今回の改正で新たに罰則の対象となったのが、自転車の「酒気帯び運転」です。これまでもアルコールの影響で正常な運転ができないおそれがある状態での「酒酔い運転」は罰則の対象でしたが、改正により、身体に政令で定める基準値以上のアルコールを保有した状態での運転、すなわち「酒気帯び運転」も厳罰化されました。酒気帯び運転を行った自転車運転者には、三年以下の懲役または五十万円以下の罰金が科されます。飲酒運転は、自動車と同様に自転車でも極めて危険であり、重大な事故に直結する行為です。また、今回の改正では、自転車の運転者が酒気帯び運転をすることを知りながら、その運転者に自転車を提供したり、酒類を提供したり、あるいは酒気を帯びた運転手に自分を送るよう依頼して同乗したりする行為も罰則の対象となりました。自転車の提供者には三年以下の懲役または五十万円以下の罰金、酒類の提供者や同乗者には二年以下の懲役または三十万円以下の罰金が科されることになり、周囲の人々も飲酒運転を助長しない責任が明確化されました。
これらの「ながらスマホ」運転や「酒気帯び運転」といった危険行為は、単に罰則の対象となるだけでなく、特定の危険行為として、反復して行った場合に受講が義務付けられる「自転車運転者講習」の対象にも追加されています。危険な運転を繰り返す運転者に対しては、講習を通じて交通ルールの再確認や安全意識の向上が図られることになります。
今回の法改正は、自転車が単なる軽車両ではなく、交通ルールを遵守して安全に運転すべき「車両」であることを改めて社会に周知し、自転車関連事故を減少させるための重要な一歩です。私たち自転車運転者一人ひとりが、これらの新しいルールや罰則を正しく理解し、常に安全を最優先にした責任ある運転を心がけることが、全ての人にとって安全で快適な交通環境を実現するために不可欠です。
安全な自転車利用のために心がけたいこと
自転車は手軽で便利な乗り物ですが、同時に車両として交通ルールを守る責任があります。自分自身の安全はもちろんのこと、周囲の歩行者や他の車両の安全を守るためにも、以下の点を常に心がけましょう。
- 交通ルールをしっかりと理解し遵守する。
- 「かもしれない運転」を心がけ、危険を予測する。
- 死角に注意し、安全確認を徹底する。
- 夜間は必ずライトを点灯する。
- 自転車保険への加入を検討する。(加入が義務化されている自治体もあります)
- ヘルメットを着用する。(特に児童・幼児の保護者は着用させる努力義務があります)
まとめ
道路交通法の改正により、自転車の「ながらスマホ」や「酒気帯び運転」に対する罰則が強化・新設され、悪質な違反を繰り返す運転者には講習が義務付けられるなど、自転車の交通ルールは厳しくなっています。これは、自転車関連事故を減らし、全ての道路利用者が安全に通行できる環境を作るために不可欠な措置です。
私たち自転車運転者は、これらの新しいルールや既存の交通違反について正しく理解し、常に安全運転を心がける必要があります。自転車を安全に楽しく利用するために、一人ひとりが交通モラルを高め、責任ある運転を実践していきましょう。