18歳から大人?クレジットカードの賢い利用とトラブル回避術

2022年4月1日より、民法の改正により成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。これにより、18歳や19歳の新成人の方々も、親権者などの同意なしで様々な契約を結ぶことが可能となり、クレジットカードもご自身で申し込めるようになりました。
クレジットカードはキャッシュレス決済が可能な便利なツールですが、その一方で、仕組みや利用方法を理解せずに使うと、想定外の手数料や高額な支払残高に気づかないといったトラブルに巻き込まれる危険性があります。本記事では、新成人の皆さんがクレジットカードを安全に、そして賢く利用するためのポイントと、万が一トラブルに遭ってしまった場合の相談先について解説します。
成年年齢引き下げで何が変わったか?
成年年齢が引き下げられたことで、18歳から単独でクレジットカードの申し込みや各種契約ができるようになります。未成年者が親の同意なしに結んだ契約は、原則として取り消すことができましたが、成人になると一人で契約できる半面、原則として一方的にやめることはできません。このため、契約に関する知識や経験が乏しい成人になりたての若者が、消費者トラブルに巻き込まれやすくなる傾向が見られます。
実際に、全国の消費生活センター等に寄せられる消費生活相談件数は、18・19歳よりも20歳から24歳の相談件数が約1.5倍に大幅に増加しています。これは、社会経験に乏しく、保護のない成人を狙い打ちにする悪質な事業者も存在するためと考えられます。
クレジットカードの仕組みと潜むリスク
クレジットカードは、消費者が約束通りに支払ってくれるという「信用」に基づいてクレジット会社が代金を立て替えることで、現金がなくても買い物ができる仕組みです。カードが発行されると、利用限度額が定められ、その範囲内で商品購入やサービスの提供を受けられます。
しかし、手元や口座にお金がなくても買い物ができるという点では「借金をしていることと同じ」であり、計画的な利用が不可欠です。
特に注意したい「リボ払い」
クレジットカードの支払い方法には、手数料が発生しない「翌月一括払い」や「ボーナス一括払い」の他に、手数料が発生する「分割払い」や「リボルビング払い(リボ払い)」があります。
特にリボ払いは、毎月の支払額が一定になる便利な仕組みですが、支払残高に対して手数料が発生するため、残高が多く支払金額が少ない場合などには、支払いがなかなか終わらない事態に陥る恐れがあります。アンケート調査では、「カードが申込時からリボ払いになっていたことに気づかずに使っていた」といったリボ払いに関するトラブルが最も多く寄せられています。中には、リボ払い専用のカードや、最初から支払方法がリボ払いに設定されているクレジットカードもあるため、申し込み時には十分に確認し、意図しない支払方法とならないよう注意が必要です。
多発する若者のトラブル事例
消費生活センターには、以下のような相談事例が寄せられています。
- 限度額いっぱいの買い物をし、支払いができなくなった事例:成人して簡単にクレジットカードを作ったものの、限度額まで買い物をしてしまい、督促状が届き、その返済のために借金を重ねて返済不能になったケース。
- リボ払いを選択し、支払残高が高額になっていた事例:割引サービスのあるリボ払いを選択した結果、1年以上経ってから利用明細を確認すると、支払残高が約30万円にもなっていたケース。
- 悪質なもうけ話の契約でクレジットカードを作るよう指示された事例:SNSを通じて「もうかる話」に誘われ、副業のコンサルティング契約を結ばされた際、クレジットカードを作るよう指示されたケース。
その他、インターネット関連、特にネットゲーム関連のトラブルも急増しており、欲しいキャラクターのガチャに熱中し、気づけば支払い能力を超える金額を請求されたという事例も報告されています。
なぜ若者は狙われるのか?
消費者トラブルに巻き込まれる若者の要因として、以下の点が挙げられます。
- 知識・経験の不足に付け込まれる:契約内容をよく理解しないまま、相手の誘いに乗って署名・捺印をしてしまう。
- 「絶対にもうかる」など、うまい話に弱い:「簡単にもうかる」「お金を増やせる」といった甘い誘い文句にのせられて、高額な商品やサービスの契約をしてしまう。
- 断りにくい状況に追い込まれる:「今日中なら安価で契約できる」「すでにあなたの担当者が決まっている」などと言われ、断ることが難しい状況に追い込まれる。
- 「お金がない」と断っても借金やクレジット契約を勧められる:お金がないと断ると、「すぐに元が取れるから」と借金やローンを勧められたり、「分割なら負担が少ない」とクレジット契約を勧められたりして、契約を結ばされるケースがあります。
トラブルに遭わないための対策
クレジットカードを安全に利用するためには、その仕組みをきちんと理解し、適切な管理の下で利用することが重要です。
利用明細の確認と適切なカード管理
- 利用明細は必ず確認する:利用明細を定期的に必ず確認する習慣をつけ、身に覚えのない請求があった際には、速やかにカード発行会社に連絡しましょう。最近ではフィッシングサイトによる不正利用も発生しており、被害に早く気づくためにも利用明細の確認は不可欠です。
- カードの管理を適切に行う:暗証番号は他人に推測されない番号に設定し、カードを他人に貸与しないなど、適切に管理しましょう。不適切な管理は、不正利用時の補償を受けられなくなる可能性もあります。
- 売上票などを保管し、確認する:クレジットカードを利用した際の売上票や電子メールなどを、利用明細が送付されるまで保存し、内容を突き合わせて確認しましょう。
悪質事業者からの誘いに注意
「お金がない」と断っても、悪質事業者や知人から「クレジットカードを作ればよい」「稼ぎから支払える」などと言って、クレジットカード決済を持ち掛けられトラブルに遭うケースが増えています。クレジットカードを作らせて支払わせるような事業者は信用してはいけません。
学生のための安全な利用法
学生がクレジットカードを持つことへの不安要素として「不正利用が心配」「使いすぎが心配」が挙げられますが、カード会社ではこれらに対する対策を進めています。
- 不正利用検知システムと会員保障制度:多くのカード会社では24時間365日稼働する不正利用検知システムが導入されており、不正利用が検知されると自動的にカードの利用が停止されます。また、カードの紛失や盗難に際しての会員保障制度も完備されており、三井住友カードでは特別なケースを除き、紛失・盗難のお届け日から60日前までさかのぼって損害を補償する制度があります。
- 利用限度額の設定と使いすぎ防止サービス:クレジットカードには利用者ごとに利用限度額が設定されており、それを超えると利用できなくなるため、それ以上の使いすぎは防げます。また、カード会社によっては、月の利用予算額を設定し、超過時に通知を受け取る「使いすぎ防止サービス」なども提供されており、使いすぎを未然に防ぐことができます。
- 計画的な利用を心がける:クレジットカードは「後払い」のシステムであり、利用時に支払うわけではないため、使いすぎると返済不能に陥る可能性があります。こまめに利用明細をチェックし、あらかじめ限度額を低く設定するなどの対策を行いましょう。
- キャッシング利用時の注意:クレジットカードには現金を借り入れできる「キャッシング枠」もありますが、年率15.0~18.0%程度の高額な利息が発生するため、より計画的な利用が求められます。
- 支払い滞納の重大なデメリットを理解する:支払いを滞納すると、個人信用情報機関に延滞情報が登録され、将来的に新規のクレジットカード作成や住宅・自動車ローンを組む際に不利になる恐れがあります。数か月滞納を続けると「異動情報」、いわゆる「ブラックリストに載る」状態となり、少なくとも5年間は情報が消えないため、くれぐれも注意しましょう。
困ったときは迷わず相談を!
クレジットカードの利用に関して疑問や不安を感じた時、あるいはトラブルに遭ってしまった時は、一人で抱え込まず、早めに相談することが重要です。
- 消費者ホットライン「188(いやや!)」:身近な消費生活センターや消費生活相談窓口を案内してくれる全国共通の電話番号です。相談窓口につながった時点から通話料は発生しますが、相談自体は無料です。
- 地方公共団体の消費生活センター:全国各地に設置されており、消費生活に関する様々な相談に応じています。
契約によっては取り消しや解約ができる場合もあるため、契約後でも不安に思ったらすぐに相談しましょう。
18歳から大人になる新成人の皆さんにとって、クレジットカードは便利な一方で、正しい知識と計画的な利用が不可欠です。利用の際には、支払計画を立て、利用明細を定期的に確認し、手数料が発生する支払い方法には特に注意を払いましょう。そして、少しでも不安を感じたり、トラブルに巻き込まれそうになったりした場合には、迷わず専門機関に相談することが、ご自身を守るための第一歩です。
参考サイト
政府広報オンライン – 成年ヒヤリエピソード:これは怖い…クレジットカードの使用で数十万のトラブルに?
政府広報オンライン – 新成人18歳、19歳の皆さん、ご用心!成人になると増える、こんな消費者トラブル 18歳から大人
国民生活センター – 18歳から大人に!クレジットカードの使い方を考えよう!