図書館資料が自宅で読める!「個人向けデジタル化資料送信サービス」とは?

国立国会図書館が提供する「個人向けデジタル化資料送信サービス」は、これまで特定の場所でしか利用できなかった貴重なデジタル化資料を、ご自身のパソコンやタブレット、スマートフォンなどを用いてインターネット経由で自宅から閲覧できる画期的なサービスです。このサービスは、国立国会図書館のデジタルコレクションに所蔵されている絶版本や雑誌が、自宅で「読み放題」になる無料サービスと表現されることもあり、全国の独学者にとっても大きな恩恵をもたらしています。2022年5月19日にサービスが開始され、まるで自宅の隣に国立国会図書館ができたような感覚を味わえるほどの利便性を提供しています。
サービス開始の背景と目的
この個人送信サービスの実現には、著作権法の一部改正(令和3年法律第52号、令和3年6月2日公布)が大きく関わっています。これまで、国立国会図書館がデジタル化した資料のうち、著作権保護期間が満了していない、または著者等の許諾が得られていないためにインターネットで公開されていなかった資料は、国立国会図書館内や、提携する全国の公共図書館・大学図書館などの館内でしか利用できませんでした。
しかし、コロナ禍において、図書館の閉館や利用制限により「資料難民」が続出したことを受け、来館せずに利用できるデジタル化資料へのニーズが研究者や学生などの個人から高まりました。こうした社会的な要請、すなわち「外圧」が、サービス開始を後押しする追い風となり、図書館が所蔵する知の財産がより多くの人々に届くようになりました。
利用できる資料の種類と範囲
個人送信サービスで利用できる資料は、国立国会図書館デジタルコレクションで提供されている資料のうち、絶版などの理由で入手が困難であることが確認された約153万点(令和4年1月時点)に及びます。サービス開始当初は閲覧のみの対応でしたが、2023年1月を目途に印刷機能の提供も開始される予定とされていました。
具体的には、以下のような多岐にわたる分野の資料が含まれます:
- 昭和43年(1968年)までに受け入れた図書の一部(約56万点)
- 明治期以降の貴重書等や清代後期以降の漢籍等(約2万点)
- 明治期以降に発行された雑誌のうち、刊行後5年以上経過し、商業出版されていないもの(約1万タイトル、約82万点)
- 昭和63年(1988年)から平成12年(2000年)に国立国会図書館に収蔵された博士論文(商業出版されていないもの)
これにより、これまでの国立国会図書館デジタルコレクションで公開されていた約56万点の資料に、新たに153万点が加わり、合計で200万点以上のデジタル資料にアクセスが可能となりました。例えば、Google検索ではヒットしないような明治・大正・昭和期の幅広い年代の資料、古典や昭和40年頃までに刊行された出版物、さらには阿部知二訳のオースティン作『高慢と偏見』や、江戸川乱歩が訳したと話題になったアラン・ポー集、三島由紀夫著作のキャロル原作『ふしぎの国のアリス』といった文学作品も利用できます。また、近年のインターネット公開されていない博士論文や、研究紀要・学会誌の目次なども閲覧でき、研究活動に大いに役立ちます。
サービスの大きな利点
このサービスの最大のメリットは、何よりもその利便性の向上にあります。図書館の開館時間や場所に縛られることなく、インターネットに接続できる環境さえあれば、自宅にいながらにして自分のペースで資料を閲覧できる点が大きな魅力です。
膨大なデジタル化資料の中から必要な情報を効率的に検索し、手元で確認できるため、資料探索の効率化にも繋がります。これまで国立国会図書館や提携図書館などの限られた場所でしか見られなかった貴重な資料に、個人でアクセスできるようになることは、学術研究はもちろん、趣味や教養を深める上でも大変有益です。特に、地方在住者にとっては、遠隔地から国立国会図書館の資料を利用できるという点で非常にありがたいサービスと言えます。
サービス利用方法
個人送信サービスを利用するためには、まず国立国会図書館の「個人の登録利用者」になる必要があります。すでに利用者登録が済んでいる場合はその情報で利用できますが、「簡易登録」では利用できないため、本登録への切り替えが必要です。日本国内に居住している方が対象となります。
具体的な利用の流れは以下の通りです。
- 国立国会図書館の利用者登録(本登録)を行う。新規登録や本登録への切り替えはインターネットからも可能です。
- 登録が完了したら、国立国会図書館オンライン(NDLオンライン)にログインします。
- ログイン後、「個人向けデジタル化資料送信サービス利用規約」が表示されるので、内容を確認し、「同意する」ボタンを押します。利用規約は「利用者情報」画面からも確認・同意が可能です。
- これらの手続きが完了すると、国立国会図書館デジタルコレクションにログインすることで、個人送信の対象資料を利用できるようになります。ログインすると、画面右上に「図書館・個人送信資料利用可」と表示されます。検索時には、「送信サービスで閲覧可能」にチェックを入れて検索することで、個人送信対象の資料を効率的に探すことができます。資料タイトルや著者名だけでなく、資料本文のテキストデータも検索対象となるため、思わぬ発見があるかもしれません。
なお、Mozilla Firefoxのプライベートブラウジングモードでは資料を閲覧できない点には注意が必要です。
知の宝庫への窓
国立国会図書館の個人向けデジタル化資料送信サービスは、図書館の知の財産が、物理的な距離や時間の制約を超えて、より多くの人々に届けられるようになった画期的な進展です。これはまるで、広大な知識の海へと通じる、あなた専用の秘密の通路を手に入れたようなものです。この通路を使えば、これまでは遠く感じられた歴史や文化、学術の宝庫へ、いつでも自由にアクセスし、探求することができるでしょう。
個人向けデジタル化資料送信サービスのよくある質問(FAQ)
国立国会図書館がデジタル化した資料のうち、著作権保護期間が満了していないなどの理由でインターネット公開されていなかった資料を、利用登録された個人の方にインターネットを通じて送信し、ご自身のパソコンやタブレット等で閲覧できるサービスです。
日本国内に居住し、国立国会図書館の利用者登録をしている個人の方が利用できます。利用者登録には本人確認が必要です。
国立国会図書館デジタルコレクションのうち、「送信サービス限定」のマークが付いている資料が閲覧できます。これは、著作権保護期間が満了していない、またはインターネット公開の許諾が得られていないために、これまでは館内でのみ利用可能だった資料です。
いいえ、全てのデジタル化資料が閲覧できるわけではありません。著作権保護期間が満了しており、インターネット公開が可能な資料は、これまで通り国立国会図書館デジタルコレクションで誰でも自由に閲覧できます。本サービスは、あくまで「送信サービス限定」の資料を対象としています。
著作権保護のため、原則として資料のダウンロードや印刷はできません。画面上での閲覧のみとなります。ただし、国立国会図書館の館内端末や提携図書館の専用端末では、別途複写サービスを利用できる場合があります。